銘文 『伊豆国住湧水心貞吉作之第十回新作名刀展受賞』『為森下伊一朗鍛之昭和甲寅年二月日』 種別 刀 長さ 73.9センチ 反り 2.3センチ 元幅32ミリ 先重7ミリ 先幅21ミリ 元重5.5ミリ 刀身717グラム (すべて約です) 静岡県教育委員会
銘文 『伊豆国住湧水心貞吉作之』『為森下伊一朗鍛之昭和甲寅年八月日』 種別 わきざし 長さ 53.3センチ 反り 1.5センチ 元幅30ミリ 先重6ミリ 先幅21ミリ 元重4.5ミリ 刀身425グラム (すべて約です) 静岡県教育委員会
伊豆国住湧水心貞吉の大小です。刀には同門であった月山源貞一鞘書もあり、第十回新作名刀展において優秀賞を受賞した相州正宗写しの最高傑作です。
出来は大小共に群を抜いており、地景を交えた美しい最高の地肌であり、刃中には金筋が美しく入り、地刃ともに明るく冴えて覇気があり、沸え匂い深く現代刀の中でも一線を逸脱しており本工の技量を遺憾なく発揮された覇気に満ちた相州伝の名刀と云えます。
榎本貞吉は本名を榎本貞市といい、明治四十一年徳島県に生まれ、昭和三年大阪の月山貞勝に師事し師の頭文字を承けて『貞吉』と名乗のり、月山貞勝の歿後、昭和十八年に静岡県三島市大宮町に移住。鍛刀地にある菰池の湧水は市内を流れる桜川に注ぎ、菰池の湧水を用いて鍛刀したことから『湧水心』と号しました。太平洋戦争後には数多くの入選を経て平成八年に無鑑査となりました。享年九十二歳。
月山貞勝門下では人間国宝の月山貞一、高橋貞次と並ぶ名手として知られ、『鍛えの貞吉、彫りの貞次』と並び称されました。